複雑なデザインのシルクスクリーンプリント その苦労話とは!?

  • 2022年7月22日
  • 2022年7月26日
  • コラム
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皆さま、こんにちは!ndcです。

ブランドとしての企画ではなく、ちょっと面白Tシャツシリーズとして企画された「流星猫」

今回はこの流星猫のプリント手法を見て行きたいと思います。

まず一番最初にデータを作ります。このデータを版屋さんが版にします。

この猫のTシャツをつくるのにあたり、猫写真家の久方広之さんの「のら猫拳」の躍動感ある猫の写真を使わせて頂いております。それもあって本当に良い作品にしなければと意気込みました。

久方さんの写真はどれも驚くようなどうやって撮ってるの!?という猫の写真ばかり。本当に猫って飽きないでずっと見ていられる不思議な動物ですよね。

猫の写真が気になる方はTwitterのやインスタでもご覧になってください。

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データのイメージ

こちらがそのデータです。普通の文字やシールのようなデザインなら問題ないのですが、流星の擦れ具合、これを出すのにとても苦労しました。。

最初にインクジェットの会社に依頼しました。プリントにはシルククリーンとインクジェットの2タイプに分かれます。インクジェットは版を必要としません。写真やカラー系はインジェットの方が安く仕上げることができます。


1回目 インクジェットプリント


今回インクジェットで上がってきたのがこちら。

データとは程遠い出来になりました。回りの白っぽいのもおかしな印象ですね。

これではダメだと判断し、インクジェットはやめました。



2回目 シルクスクリーンプリント

版代はかなりかかりますが、シルクスクリーンでチャレンジすることにしました。失敗は勉強代として仕方がないことです。

シルクスクリーンプリントでは4色分解というカラー印刷で使う手法でやりました。

それで上がって来たのがこちら。

インジェットのときより格段に良くなりました!

ですがデータの流星は流れるような雰囲気なのですが、ちょっとモチっとしているというか、流れている感じがあまり出ていません。

このデザインをしてくれたグラフィックデザイナーにこの写真を見せたところ、「シルクスクリーンでこれってクオリティとっても高いですね!」と驚いていました。

普段から洋服を作ったりグラフィックをやっている人にはスゴいということが分かるみたいですね!

これはこれで素晴らしい仕上がりなのですが、当初企画していたものに近いイメージにしたいということで、もう一度版から作り直すことになりました。

これを担当してくれたのはこのブログではおなじみの刷り師の星野氏。私の我儘な要望に本気で向き合ってくれました。

導き出した答えは

星野さんにもう少しこういう感じにしたいと伝えると

「流星部分はメッシュにして、猫だけを別に4色分解にしたらいいんじゃない?」

と言われました。今までの経緯から想像するに、それなら理想的なプリントになりそうな気がしました。

そしてデザインを新たに作り直し、もう少し粗い粒が表現できるようなデータにし、縦の大きい版を使うということだったので、上と下に星を足しました。止まっている星もプラスして出来たデータがこちらです。

前回の線だけの背景の星よりは宇宙の雰囲気が増しました。

これで版を作成。

いざプリント現場へ

今回は私も現場に赴き、試し刷りをしてから本番を刷ってもらうことにしました。

まずは色作りから。塗料を混ぜてデータの色に近い色を作っていきます。


流星プリント メッシュ2版

これは流星の版です。流星だけで2版あり、最初にパープルを刷って、その後に白を刷ります。

まずはパープルを刷ります。これは版をメッシュで作成していて、刷るとこのように粒々がキレイに表現されます。

その上から白を刷ります。白もメッシュになっているので、かなりデータに近い感じになりました。

この白だけでも少し透過性のある白を試したり、色々とやっていただきました。

少し色に赤みを足したり青みを足したり。

色の出方を見比べて、私のイメージに近い方を選びました。

止まっている星もメッシュになっているので、ぼわっとしているのが分かるかと思います。

流星はOKとなり、まずは流星だけを刷っていきます。

このプリント機械では一度に6枚を連続で刷ることが可能です。プリントしてから温風で乾かしてから、白をプリントするという手間がかかります。

猫のプリント 4色分解

いよいよ猫のプリントです。

一度全部乾燥機に入れてから、再度流星の上にプリント。

刷り師の星野氏曰く、「1枚のデザインで2回も版をセットして乾燥させるのなんて無いよね」と言っていました。

ここまでのこだわりをもってこんな変なデザインのTシャツを本気で作ろうとしている私みたいな物好きはそうそういないようですね、笑

4色分解とは

版を4つ作らなければならないため、手間は掛かりますが、写真や絵などの細かいデザインが可能で効果的な技法です。

網点(カラーハーフトーン)で表現したC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)の4色を個別に製版し、点描写のCとMとYとKが重なりあって、オレンジ、ブラウン、グリーン・・・などのカラーを表現する技法です。

カラープリンターも同じ理屈ですね。この4色を別で刷ることによりカラー写真などもプリントで表現ができます。

4つの版を使わなければいけない手間とコストがあり、カラープリントはインクジェットが主流になっています。


まずは下地に白を入れます

次に黄色が入りました。今回のグラフィックは茶虎の猫なので黄色がベースとなります。

赤です。ここまででかなり猫の模様が浮かび上がってきました。

この後に青が入りますが、青はほとんど使われていません。

最後に黒が入ります。完璧な猫になりました!

赤の調整が一番難しく、刷りすぎると赤っぽくなります。逆に黒が少ないとのっぺりしてしまいます。

そのニュアンスは熟練した刷り師が刷りながら調整するしかありません。

この4色分解がプリントされていく過程の動画を撮影してきました。

3分50秒ほどですので、良かったらご覧になってみてください。

実際のファッションデザイナーもメールのやり取りしかしない人の方が多いので、現場でこうプリントされているのを見たことがない人が多いです。


こうしてプリントされた流星猫は2回目の乾燥機にかけて完成です!



こうして理想的な流星猫が完成。

粒子が消えゆく雰囲気を出すことができました。

こういうデザイン一つにこれだけの苦労が裏にあったりすることを知った上で着てもらえるとまたちょっと愛着が変わったりするかもしれませんね!

刷り師の星野さんがいなかったらイメージが形にできず企画倒れになっていました。星野さんには感謝しきれないですね! この後一緒に飲んだお酒が本当に美味しかった。充実した1日でした。

これからも星野さんと一緒にすんごいTシャツを作っていきたいって思いました。


というわけで、苦労したシルクスクリーンプリントのお話でした。


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